私、横瀬武夫は今日も真剣に悩んでいる。
はて何に悩んでいるのかというと、改めて紹介するほどでもないが「本日の夕食」だ。
「何を食べようか?」
という事を、長年の悩みのごとく真剣に悩み、またその悩んでいる光景を不思議そうに見る通行人も多々いる。
しかし、「本日の夕食」をどうするのかを悩んでいると思ってはいないであろう。
それだけ悩むのには、それなりの理由があって今日は一人の女性を食事に誘ったのだ。
簡単に誘うような本当に軽い男なのだが、その後の事は意外と何も考えていない・・・そんな事が多い。
何かを食べたいから誰かを誘うのではなく、誘ったのだから何かを食べないとという誰にでもある普通の思考なのだがそこから先が普通ではないのであろうと思う。
「う~ん・・・」
頭の中には和食をはじめイタリア料理やフランス料理色々な料理とそれを食べる二人の光景をイメージし始めた。
悩んでいる自分に誰かが囁く!
「横瀬武夫しっかりしろ、早く決断をするのだ」
よくよく考えてみれば、囁く人物も横瀬武夫であって、まぁ簡単にいえば優柔不断な私自身が作り出したもう一人の自分といえようか?とはいえ、二重人格といわれるようなものではなく、ごく一般的な言い方でいえば「自問自答」が作り出した世界。
いやいや!
時間はどんどん迫ってくる。
今夜は女性と食事なのだ!
意外と簡単な悩みなのだが、時間をかけ横瀬武夫は今日も悩み続けた。
そして食事が終わり、夜が明ければ新しい朝と共にまた新しい悩みが私を温かく迎えてくれるであろう。